【高野山真言宗成田山真如院(羽幌本院・札幌分院)】札幌・羽幌での十三参り・水子供養など

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コロナウイルス感染症と日本人の心の中の価値観

〈更新日: 令和2年5月17日 〉 ※写真が掲載されている場合は、クリックすると拡大表示されます。

4月7日からのコロナ感染症急拡大所謂オーバーシュートに向けて取られた政府の緊急事態宣言が5月14日にようやく全国39府県が一部解除され、5月25日東京関東全域と北海道も含めた8都道府県全面的に宣言が解除される。約2ケ月の謹慎期間が解けるのだ長かった。
1月に入って以後ちょぼちょぼと日本全国に渡って感染症患者さんが少しづつ発症していたが、3月中旬頃から何やら怪しくなりあれよあれよという内に感染者が爆発的に急拡大した。3月中旬若しくは下旬ころまでに収束して落ち着くだろうと高を括っていたが、3月下旬から思いがけない展開になってしまった。
特にタレントの志村ケンさんが亡くなってから世の中が一変しだした。引き締まったというか、怖くなってきたというか、日本国中の世の中が緊張に包まれるようになった。
4月に入りそれこそ毎日400~500人程度の感染者がテレビで報告され、とうとう7日に政府から緊急事態宣言がなされた。にもかかわらず10日には、一日の感染者が全国が800人近くまで膨れ上がり、日本中が緊張の渦に包まれた。イギリスやアメリカ、隣国の韓国などからは、連日の如く東京は明日のニューヨークともてはやされた。その時ニューヨークでは一日千人どころか二千人もの患者数が報告されてアメリカ全土に100万人ほどの感染者が発症し最早手の付けられない状態に成っていた。所謂オーバシュートである。完全なトランプ政権の初期初動の失敗の遅れが大きなつけとなって表面化していた。
感染者のグラフ表示をみて見るととんでもない対対数関数グラフとなっている。手の施しようもない簡単に言えば諦めの数字である。日本は、ニューヨークやアメリカなど欧米各国と同じような状況に陥ると百家争鳴のごとく毎日、ネットや新聞、テレビで報道された。日本の感染症対策は生ぬるい、成っていない、ロックダウンや強制罰則を伴った法的措置を執らなければ日本は崩壊すると言われ続けた。
しかし、5月14日に緊急事態宣言が一部解除になってからは、そんな批判めいた論評は一切なくなった。寧ろ日本の取った手法は、「世界的に見て誠に奇妙、不思議な方策だ」、「よくわからない、ラッキーだ」などと何やら褒めているのか貶しているのか分からない論評が目立つようになっている。私達日本人にとって見ればごく当たり前の感染症への対応手法と考えているる。別に特別に論評されるような手法や考えではないのだが、日本以外の国々には何か特別な手法を取った奇妙で不可思議な国のように見えるようだ。
何処に違いが有るのか、このコロナの感染が収まってから各専門家からの検証があるとは思うが、私から素人ながら分析検証した意見を述べて見たいと思う。
勿論中国のような強肩手法で人権を無視した戦時体制の国を彷彿させる手法も感染を抑えた手法だと習近平態勢は言いたいようだが、人間の自由な存在や生き方を抑圧した国家は、とても国家とはいえない。人間が自由で安全で落ち着いた生活が出来る国家であるこそが本来の民主主義国家の筈だ。ましてやその中国からコロナウイルスを発生させ、世界中にウイルスをばら撒いて。その結果として手のつけようのない状態に追い込んでしまった責任は大きいし、そんな事態を引き起こしてから「私の国は、コロナ感染を抑え込んだ優秀な国家である」と宣言したところで世界中の誰からも相手にされない筈だ。
むしろ馬鹿にされ、笑われ者に成っているだけだ。今後、世界中の国々から国家賠償を含む、とんでもない国家間の衝突が起きることが懸念される。そんな一方、最早巻き込まれてしまった私共日本は、どうすべきなのか、経済も含めて、将来が見えない暗い暗澹たる道を彷徨い始めたと良いかも知れない。
そんな日本人のコロナウイルスに対応する姿勢について私なりに一考してみようと思う。
昨日、5月15日の有る一つの評論の中に書かれていたものは、日本人の清潔感、お辞儀などの生活習慣、沓を脱いで家の中に入る習慣、そして規律正しくも綺麗好きなどいろいろと上げていた。国民皆保険制度、充実した医療制度、優秀な医療環境、最先端の医療機器、最先端の治療薬、早期のワクチン開発などの良さを示す内容だった。
他に仏教と欧米の宗教の違い、日本人の文化や生活や人間関係に関する価値観と欧米の価値感の違いを一部指摘する人もいた。
私からは、宗教者である以上、そのへんの宗教的、文化的価値観から欧米との違いの中からみて見ようと思う。
仏教で教える物の考え方に「自他の利益」という価値観がある。自分だけ良ければ良いという価値観ではなく自分も他人も同じように良い価値が得られていなければ成らないという考え方だ。
また、密教では「自性清浄心」という教えを第一義として説いている。それは、社会の中で生きる為には、自分の心の中にまず最初に自立,自律、自己意思、自由意志が備わっているべきこととして強調する。
5月16日のネットの中における調査に「コロナに掛ったとしたら、それは自己の責任と思うか」という問いかけに対して欧米では、それは、自分が悪いのではなくて他人のせいによるものだと考える人が60~70パーセント近くいるのに対して、感染症にかかることそのものは、自己のいせいであり自分の責任であって他人に責任があると思わないと考える日本人が70パーセント近くいるという数字を報告している人がいた。
少なくともこの数字を参考にして見れば、日本人と欧米人の他者との関係性を見る時真逆の関係に成っている事が分かる。
言うなれば欧米は「父性主体」所謂キリスト教の教えを主体とする父性的な自己主張が出来る存在が価値観として前面出ている。一方私共仏教を中心とする物の考え方にには、「母性主義」いわゆる自己主張よりも他者を受け入れる思想、他者を包括出る思想を有していることである。そして、この「母性主体」を主張する中には、まず各々の自己の中に他者を受け入れられるだけの力量が備わっていることが必要とされる。その力量というものは前述した自立他のものを示す「自性清浄心」というものなのだ。
だからこう考えて見ると私達日本人が持っているアイデンティティーとも言うべき日本人的心の価値観が非常に堅固に日本人の心の奥底に培われ、心の奥底に仕舞われていると言える。
その一つの良い例が東日本大震災の時の事例がある。東日本大震災の有った平成23年3月11日の夜、その時の東京は、都内の電車が全てストップしてしまった、その非常時に東京人が取った行動は、整然と整列し、一致して文句ひとつ言わず黙々と歩いて帰宅する姿の様子がテレビに映し出されていた。
それの姿をテレビで見ていた中国の指導者である習近平主席は「日本人は賢いだけではない。一致団結して歩もうとする日本は、むしろ恐ろしい国だ」と呟いたと言われている。
これは、日本人の心の中にある価値観は、仏教に根差した絶対平等の教えの下に根差す平等的価値観と強靭な自立観など所謂、自性清浄心が根差しているものだと私は考える。そして、そのような価値観が心の奥底に育っているからこそ今回のような感染症対策に対応できたものと見ている。日本人は、仏教徒なんですよ。仏教の根本価値を知らず知らずに身に付いているのですよ。

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